大学院生の頃から顔見知りだったスタッフが、いつもの店を辞める。その別れが、この歌を作るきっかけでした。
その人との別れを通じて、スタバとの出会いから今までを振り返り、その想いを歌に残したいと思いました。ひとりの人が店を離れることで、その場所と一緒に過ごしてきた自分の時間も、改めて見えてきたのです。
歌に込めたかったのは、飲み物を売るという商売の説明には収まりきらない、その場所の意味でした。同じような思いを持つ人は、自分たちの世代にきっとたくさんいる。暮らしの中に根付いたカルチャーであり、そこで働く人にも誇りを持ってもらえるような歌にしたい。その想いを、ゆるやかなレゲエに乗せました。
そんな気持ちを、この二行に込めています。
コーヒーだけじゃ なかったんだ
ここでずいぶん 生きてきた
この場所が自分にとって何だったのかを考えると、そこで過ごした自分の時間が浮かびます。「生きてきた」と言うことで、一杯の値段にも、飲んだ回数にも換算できない時間が入る。歌の中に並ぶ若い頃の自分や、父親になった自分を、この短いサビが受け止めます。
「誇りを持ってほしい」を、受け取った側の言葉にする
店で働く人に、自分たちの仕事を誇りに思ってもらいたい。その想いを、歌詞はこんなふうに表しています。
手渡していたのは 一杯でも
受け取ったものは こんなにある
手渡す側から見れば、一杯のコーヒー。その一杯を受け取る側には、そこで過ごした時間や、人とのつながりが重なっている。「カルチャー」や「誇り」という大きな言葉を、カップを渡す人と受け取る人の間に置き直した二行です。
あなたのしてきたことは、自分にとってこれだけの意味があった。そう伝える形にすることで、感謝の向かう相手が見えてきます。
別れの話を、送り出す挨拶にする
歌の出発点にあったのは、顔見知りの人が辞めて、いつもの店からいなくなってしまうという寂しさでした。その気持ちが、歌の終わりでは相手のこれからを願う言葉に変わります。
あなたの次の 朝にもどうか
やさしい「おはよう」 ありますように
そして、最後の一行はこうなっています。
いってらっしゃい 今度は僕から
店との出会いから今までを振り返った歌が、ここで相手の未来を向く。「今度は僕から」と添えることで、受け取ってきたものを、自分からも返す挨拶になります。
いつもの店、いつもの一杯、いつもの人。何でもないように続いていた時間の意味が、別れを前にして言葉になりました。その想いを歌にすると、「ここでずいぶん生きてきた」と「いってらっしゃい」が、一曲の中でつながったのです。
本作は、ひとふしのサイト運営者による非公式の自主制作作品です。スターバックスの協賛・公認を受けたものではありません。